中堅・中小企業においては経営者がITについてよほど理解が深く、自らITに対して積極的に投資を行っていく姿勢がない限りはなかなか IT についてまとまった投資が行われることは難しいのが実情です。中小企業においては直接的な売上を上げるための施策の意思決定・実行スピードは大企業と比べ物にならない程早いのですが、IT の場合はそれが売上・利益に直接的ではなく、業務効率化やデータ分析など間接的に会社の利益に結びついてくるためです。そのため IT 部門自体きちんと置かれていなかったり、たまたまパソコンなどに詳しい人が他の業務と兼任していることが多いです。
そして、中小企業においてまとまった額のIT 投資をするとなると、社長の決裁になることが多くその投資判断は社長自身に最終的には委ねられることになります。ここで経営者としては、当然その費用対効果 (ROI) を問うことになります。例えば1000万円のシステムを導入することで、それに対するメリットはなんなのか?それ以上の利益を生むことができるのかどうか?責任はとれるのか?こうした質問をその決済の起案者に投げかけます。しかしながら、ここでなかなか腹をくくって説明して責任をとることが難しいのが現状だと思います。
そうした業務効率化などの利点を例えば「現場のアルバイト一人あたりの処理時間が1日1時間節約され・・・」と説明したとしても、そのためのイニシャルコスト(導入時にかかるトレーニングなどのコスト)が最初にどうしてもかかってくるため、現場としては現状維持の方向に向かいます。ここできちんと現場を巻き込んでおかないと、現場の担当者からは「今のままでも十分です!」「そんなにお金をかけなくても現状のオペレーションを見直し、ムリ・ムダ・ムラをなくすことで、更に効率化することが出来ます!」という声も聞こえてくることでしょう。
また「データを活用することでこういう視点から分析を行い営業施策に活かすことが出来ます・・」と説明すると、結局それで売上いくら上がるのか、と問われることでしょう。ここで腹をくくって営業の責任者とともに「○○%上がります」と言えれば通る可能性もあります。しかし、データ分析したからといって、すぐに売上につながるわけではなく、データを本当の意味で活用するためにはそこから顧客の「ストーリー」を見つけ出し、様々な施策につなげていき、その結果を測定し、会社全体としてトライ&エラーを繰り返していく必要があるため、数年単位の時間がかかるものです。そのため、どちらかというと短期的な結果・スピードが重視されることの多い中堅・中小企業においては、仮に投資が行われても短期間で判断され「あまり意味がなかった」となってしまいがちです。
もっともこうした視点は経営者としては至極当然のことです。中堅・中小企業は経営が傾いたとしても国が救済したりなどはありません。そうした常に企業の存続とのプレッシャーと隣り合わせで戦っている経営者としてはそうした視点はむしろ当たり前のことだと言えます。私たちはそうした企業をコンサルティングしていくなかで、中堅・中小企業に本当の意味で価値のあるITソリューションとは何なのだろうか、と考えてきました。そこで出てきた一つの答えが、「インフラとしてのIT」でした。