一身独立の記

昨今の宅配便問題

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 昨今、宅配便業界のこんな記事を何度も目にする。「宅配便業者がネット通販の急速な拡大によって需要が急増し、宅配便業者で働く人々の労働環境が極めて悪化している。これは主にAmazon などがはじめた当日(お急ぎ)便が原因であり、ひいては顧客である我々日本人が当日便や時間指定便など、サービスの品質を過剰に求めすぎることや、留守が多く持ち帰らざるを得ないことなどがその原因である。」

そしてそれは Twitter、Facebook などでもシェアされ「荷物なんて当日届かなくてもいいはずだ」「宅配業界がブラック化してしまっているのは、私たちのせいだ。反省しよう。」「Amazon はその立場を利用して業者をこき使っている」などの意見が多く拡散している。

1度ならアホかと思いつつ無視して終わるとこであったのだが、これが忘れた頃にまたネットに出てきて何度も繰り返されている。はっきり言って違和感しかない。宅配業者とAmazon(なぜかいつもここで俎上に上がるのはAmazonが多い)は企業と企業として交渉し、契約を締結しているはずだ。宅配業者が割に合わないと思うのであれば締結しなければいいだけだ。それでも契約しているのだから、それを履行しなければならないのは宅配業者の責務だ。

ネット通販の急成長により予想よりお急ぎ便の量が増えてしまったのかもしれない。しかしそれは消費者のせいではなく、宅配便業者の経営陣の見通しの甘さのせいだ。量が増えてしまうと回らなくなるのであれば、契約の中に荷物の量が一定以上増えた場合には料金を最交渉するなどの条項を盛り込むべきだ。見通しの甘さがネット通販の急速な拡大で、ということで許されるのであれば、宅配業界の経営陣はぬるすぎる。

更に、それを消費者の責任にするという論拠はまったく意味が分からない。資本主義の世の中では企業が自由な競争で消費者により優れたサービスを提示し、実現していくことで経済が、そして社会が発展していく。当日お急ぎ便というのも、我々消費者のニーズがあったから Amazon が開発し我々に提示した。そしてそれを実現するために、Amazon は日本の宅配業者と交渉し、契約を結びサービスが実現することとなった。そのおかげで少しの会員料金を払うだけで、私の住んでいる首都圏では、いつでも当日もしくは翌日に殆どの欲しい商品を手にすることができるようになった。素晴らしいことだ。もう以前には戻れない。

しかしここで「その裏には悲惨な宅配員の労働環境があるのだから、利用を控えたほうがいい」という人もいる。これも全く本末転倒だ。もちろん宅配員の方々には敬服する思いだ。僕もかなりの当日便のヘビーユーザーだが、ほとんど遅れたことがない。礼儀正しくいつも荷物をきっちりと運んできてくれる。こんな高品質な宅配サービスが実現しているのは日本だけではないだろうか。だからといって、その裏の労働環境まで忖度しなければならない義務はない。間違ってはならないのは、労働環境の整備は雇用主である企業側の問題だ。自分たち消費者のせいにするというこの自虐的発想は、経営陣を甘やかし、逆にブラック企業を生むことになるのだ。

それに、なぜ宅配業者ばかり忖度しなければならないのか。例えばコンビニは24時間いつでも開いていることが当たり前になってから久しいが、深夜に働いているスタッフの方々のおかげで成り立っている。それを品質過剰だとしてコンビニも9時17時で閉めるべきだ。となるのか。また我々がサービスを受けているその他の小売業、外食産業、教育業界、介護業界、IT業界などなどその他全ての業界も全て公平に調査したのか。

そしてそれらをみなそこで働く人々が大変だからという理由でサービスを縮小しなければならないとしたら、資本主義としては終わりだし、国力も衰退し、早晩中国に吸収されてしまうだろう。

そして最近見たこの記事だ。 ヤマト、未払い残業190億円で利益半減の驚愕

 「私たちの想像を超えるほどの労働需給の逼迫、Eコマース(EC、インターネット通販)を中心にした荷物の急拡大に、体制が追いつかなかった」(芝崎健一専務執行役員)。

いまだに、またEコマースのせいにしているが、時代を読めなかった経営陣の責任であることは明白だ。そして、驚くべきは「未払い残業190億円」である。ということは、やはりヤマトは見通しの甘さから Amazon などから割に合わない大量の受注を得てしまい、それだけでなくそのツケを宅配員の皆さんに支払わせていたということなのか。Amazon の大量の受注をさばくためのコストを宅配員にタダ働きをさせることで、利益を維持しようとしたのかという疑念を持たざるを得ない。

ヤマト運輸、Amazonの当日配達撤退へ ドライバーの負担軽減で

当日の配達の引き受けを徐々に減らし、将来なくす方向とみられるという。業界大手ヤマト運輸のこの動きは、通販各社のサービス見直しに繋がる可能性がありそうだ。アマゾン・ジャパンは、同紙の取材に対し、「契約に関するコメントは控えたい」と話した。

そしてその割に合わなかった受注からは徐々に撤退していく予定のようだ。これはビジネス判断としてはありうる。しかし Amazon も言っているとおりそこには契約があり期間も定められているはずだ。だからすぐにはやめたくても辞められない、どうしてもすぐやめたいということであれば違約金のようなものをAmazonに払ってやめるしかないのではないだろうか。その訴訟や違約金のコストと、ドライバーにツケを払わせることを天秤にかけて、今回の未払い残業の問題となったのであれば、それは問題である。

そしてそのうち宅配業者が全て当日便から撤退したらどうなるか。しばらく当日便はなくなってしまうかもしれないが、そのうち Amazon 自身ではじめるのではないだろうか。今、ヤマトとAmazon の間では熾烈な交渉が行われていることは想像に難くないが、個人的にはお急ぎ便はもう少し価格に上乗せがあってもいいと思う。とにかく未払い残業代など発生させずにきちんと見合った価格を提示し、健全にサービスを提供してほしいと願うばかりだ。

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